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福岡地方裁判所 昭和42年(ワ)509号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件事故現場は、西鉄高宮駅の南方野間四ツ角から南西屋形原方面へ約二五〇メートル進んだ県道と市道の交差点で、附近は街道筋の住宅街であり、ほぼ南北に通ずる県道は歩車道の区別のない舗装部分の幅員7.9メートル(両側に若干づつの非舗装部分あり)のみとおしの良好な直線の道路で最高時速四〇キロメートルの速度制限がなされている。これと直角に交差する東西方向の市道は交差点から南の部分は幅員5.8メートルの歩車道の区別のない舗装道路であり、交差点から北の部分は幅員四メートルの歩車道の区別のない舗装のない直線道路である。交差する道路の相互間の見とおしは商店、住宅、植木等のため極めて悪い。

(二) 昭和四一年九月六日午後五時五〇分ごろ、被告は前記市道を東方から被告車を運転して西進し、交通整理の行われていない本件交差点に差しかかり、交差点の、直前で一旦停車して左右を確認し、発進して徐行のまま約4.3メートル進行して交差道路の中央線附近に達したとき、進路前方の市道上に遊んでいる四、五人の子供を発見し、さらにスピードをおとしたが、その時左方県道上の距離約22.4メートルの地点を南進してくる原告車を認めたが、そのまま徐行して直進を続けた。

(三) 一方原告は原告車の後部座席に原告の妻を同乗させて前記県道上を時速約四〇キロメートルで南進中本件交差点の手前約16.6メートルの地点において本件交差点内を徐行で横断しつつある被告車を認めたが、直進する原告車を優先させるため被告車が停止してくれるものと思い、徐行することなく進行した。

(四) 被告は原告車が徐行することなく接近することに間近になつて気づき急停車したが、そのとき被告車の左側に原告車の前部が衝突し、原告車が転倒し、原告が負傷した。<証拠判断略>

右認定にもとづき、被告に過失があるか否かの点を判断するに、被告が交通整理の行われていない見とおしのきかない本件交差点に徐行して進入し、その中央附近に達したとき、左方約16.6ないし22.4メートルの距離の地点を原告車が進行していたのであるから、被告が原告より早く本件交差点に入つたことは明らかであり、被告が本件交差点に進入したことが原告車の進行を妨げたことにはならないので、この点について被告に道路交通法第三五条の義務違反は認められない。原告は被告が交差点内で停止するような運転をしたと主張し、道路交通法によれば交差点内では特段の事情がなければ停車してはならない定めであるが、危険を防止するためには一時停止することも許されており、被告が交差点内において最徐行したのは前記認定のとおり進路前方の子供との衝突を防止するためであり、これも止むを得なかつたものと認められ、さらに加速するに当りいまだ交差点に入つていない原告車に進路を譲つて停車せねばならぬ義務はなく、この点についても被告に道路交通法違反の過失は認められない。一方原告は本件交差点が交通整理の行われていないうえ、左右のみとおしがきわめて悪いのであるから、ここにおいては徐行しなければならない(道路交通法第四二条)のにかかわらず徐行せず、かつ既に他の道路から被告車がさきに本件交差点に入つているのであるから、その動静に注意し被告車の進行を妨げてはならない(同法第三五条第一項)義務があるのに自己に優先権ありと誤信して漫然時速四〇キロメートルで進行した過失が明らかであり、そうとすると本件事故は原告の一方的な過失によつて惹き起されたものといわなければならない。

次に、被告車に構造上の欠陥または機能の障害がなかつたかどうかは本件事故の発生とは因果関係がないからこれらの存否を問うまでもなく、被告には本件事故による原告の損害を賠償すべき責任はない。 (境野剛)

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